Kair2016年の招待作家 清水まきさんより、レーザカッターで制作した木版のレポートをいただきました。清水さん、ありがとうございます〜!
レーザーカッターで木版画の版木制作
Created Date: 2016-10-11/ updated date: 2016-11-xx
- Tags:laser cutter, woodblock printing, KSM, KAIR, kamiyama karuta, maki shimizu
Summary
2016年KAIR (神山アーティスト・イン・レジデンス)で制作された「神山かるた」は、KSMのレーザーカッターで彫られた版木から、摺りの工程は従来通りの絵の具とバレンを使った印刷手法で実現された最新技術と伝統的な版画技法をうまく融合させることにチャレンジした作品です。下絵を色分解し、色ごとに版のデータを起こしたデータを元に、レーザーカッターを使い版を彫刻し、彫りの工程をデジタル化したことで、これまでは職人さんの手でしか彫る事が出来なかった微細部の絵柄も制作が可能になりました。時間も従来に比べ短縮され、彫りミスの心配もなし。お手軽でしかも精密に完成画のイメージを版画にできることから、今後の表現の可能性の広がりに大変期待されます。
Materials
版木(ヒノキ)15mm厚
Raster Setting
speed 50%
power 100%
Time
10 x 60 cm サイズ版木全面の加工所要時間は平均約45分。
Making
1、材木選び
①スギとヒノキをテスト。
>スギ: 夏目と冬目の柔らかさとスジがネック。細かい点などは、彫ったときに残っていても、摺った際に軽い力でとれてしまう。
>ヒノキ: 固さも良好。手彫りにはちょっと癖があるけれど、レーザーでは簡単。ただし、ヤニがすごいので注意。
>今回、地場産業の木材を使いたかったのでヒノキにしたけれど、ベニヤ合板なども可。
②レーザーカッターの彫り面の最大可能サイズが30x60cmなので、それにぴったりなサイズでの作成を検討していたが、ヒノキで30cm幅のものが格高になることから、10x60cmを1レーンとした版木のサイズに決定。ベニヤ版の場合、この問題はない。
③厚さが15mmで、版の反りも少なく、両面に彫ることが可能。木版摺りの際の圧力はプレス機に通すほど大きくないので、割れる心配がなく、昔から両面に加工が施されて来た。
2、データ作成
①下絵を色分解し、色ごとに版のデータを起こす。
②最終は白黒のデータ(彫る部分が黒、残る部分が白)で、左右反転させる。
3、レーザーカッティング
①今回使った設定(Raster Setting: speed 50% / power 100%)でも充分な彫り。より深くしたり等の微調整を、レーザーカッター使用事前にテストすることがオススメ。(その他詳細設定は画像“3_lesercutter_setting.JPG“ 参照)
②全体を彫るのではなく、必要な部分だけ加工し、加工時間を節約してみたが、数分のみの差になった。手彫りでの修正時間が節約した時間以上にかかるので、今回のように時間に余裕がなく、版木全体に均一な仕上りを必要とする場合は全面レーザーカットが便利か、な。
4、ヤニの処理
①ヒノキのヤニにびっくり!
レーザーカッター使用前に新しく取り替えてもらったフィルターがなんと一日で真っ黒になって詰るという、思いもかけないハプニングが発生。カスタマーセンターに問い合わせて相談したところ、他の素材のように有害ガスや細粒がでるわけでないので、フィルター無しで、という指示をいただいた。住宅の密集していない山間部ならではの応急処置。高級なフィルターは無しだけれど、ガーゼ、石炭等で工夫した手作りの簡易フィルターを設置し、一日の作業で1~2回取り替えることで問題が解決した。(ありがとう、かずちゃん!かずちゃんが緊急対応と最後まで丁寧に面倒を見てくれました。)
②版面にこびりついたヤニの処理
ケヤキはレーザーカッター処理後にこげはなかったが、版の表面がテカテカのヤニでコーティングされ、水性木版画の際に絵の具をはじいたり、汚れがでることが懸念された。しかし、スウェットティッシュ(アルコール含)で丁寧に拭き取った後、水と石けんで柔らかいスポンジや木版用のブラシで洗ってあげると、ヤニもきれいにとれた。版木を水洗いする際、常に両面に水をかけてあげることをお忘れなく。(極端な反りを防ぐため)
5、摺り
①レーザーカッターの隅や角の彫り残し等をチェックし、必要に応じて彫刻刀で修正。
②あとは摺るのみ。みんなでワイワイ。難しいけれど楽しい作業。
6、神山かるた完成!