KMSってナニ~?何ができるの~?あべさんて何の人なん?などなど、KMSはについて沢山の疑問を持たれている方が多く見えると思います。そこで今日はKMSの生い立ち、それから代表を務めさせていただいている私、あべさやかの自己紹介をちょいと失礼します。
私は三重県出身、多摩美術大学で工芸を勉強し、そして美術の発祥の地のヨーロッパで美術がどうなっているのか身を持って勉強するためにオランダという国を選び、美術大学ヘリットリートフェルト、その後文化庁新進芸術家海外研修員としてサンドベルグ大学院にて応用美術修士をとりました。卒業後アーティストとしてオランダ、日本、その他様々な国へ出向き、で聞き取りベースに作品制作、発表それからワークショップ等を行ってきました。こんなことをしています→サイトです。
約12年間の中で、特に面白いと思ったことは、ヨーロッパでのアーティストの立ち位置です。アートも一つの立派な職業で、社会の中での立場や役割がギャラリーや美術館へ飾られるだけでなく、教育、都市計画、人権問題の解決など様々です。そのため色々な職業の方と協働しながら、他の分野では届きにくい部分へヒントやきっかけ作りをします。私もアートや文化を通して、まちづくりのきっかけ作りや人と人の顔が見える関係性の中でアートを生かした仕事をしていきたいと思いました。
そんな中、2013年、神山アーティストインレジデンスへ呼んでいただき、4ヶ月滞在製作しました。旦那の仕事が世界中でドキュメンタリーを撮影、編集する仕事の関係と旅好きな私たちで、また自身のプロジェクトでも世界中のあっちこっち行っているのですが、なぜか神山に惹かれました。
(皆さんに出演していただいたうめぼしポートレート 2013)
(神山の梅の話や雨乞い踊りを題材に製作したアニメーション「やまやまくるくる」2013)
なんでろう?
一人一人がとっても個性的で、なんだかすごく元気。そして色々なことへ興味を持たれている。作品の中で聞き取りやポートレートを撮影した関係、本当に色々な人に出会いました。人口6000人以下でスーパーも2件しかない、ホームセンターはなくて金物屋さんが一件。他の町には普通にあるお店やサービスがほとんどないのですが、皆さん何ら不便に感じられていない。むしろ、無いものは工夫して作る精神にあふれていて。そうなんです、皆さんものづくりを日常的にされている。ハイテクであったり、ロウテクであったり様々ですが、とにかく創作意欲にあふれている。これってとても魅力的だな~!と感じました。
ここ神山にオランダでお世話になっていたFablab(デジタルシェア工作工房)みたいな施設があれば、神山らしいものがもっと生まれてくるだろうな~と。そんな工作工房があれば、私も移り住んでお手伝いしたい!そこで、たくさんの方に相談しました。
どうやらデジタル工作機器を神山で買えるかもしれない!?これは耳寄りな情報でした。そうなんです。いくらFablabやデジタル機器に憧れても、デジタル工作機器はかなり高価なもので、なかなか簡単に買えるものではありません。でも、それらの機械が購入可能であれば、Fablabも夢では無いかも!NPO法人グリーンバレーと神山町のサポートをいただき、2016年の年明けにレーザーカッター、3Dプリンター、デジタルミシン等がコンプレックスへ到着しました。
私は神山へ移る前に、世界遺産のお城の中にあるFablab Amsterdamの元ダイレクターアレックス・シャウブ氏の元、ドイツで3ヶ月機材の使い方、スペースの運営などを修行してきました。
そこで多く学んだのは、メイカースペースは機材はもちろん必要ですが、人を育てていくこと、それからスペースのミッションがそれよりも大切だということでした。機械を置くだけでは、生きたものづくりの場はできないということです。それからアレックス氏から学んだことは、ハイテク技術もいいが、良いものを作っていくには手仕事も大切。レーザーカッターでただ文字を印刷しただけの看板ではそのうち飽きられてしまいます。大事なことは面白いアイディアとそれを形にしていく工夫と完成度。レーザーカッターなどはいくらハイテクと言っても道具の1つに過ぎないのです。(3ヶ月の研修の様子は英語のみですがここへ書いてあります。)
研修を終えて、神山入り。私の師匠アレックス、それからFablabsendai FLATのエンジニアであり、アレックスの生徒でもあった大網さんが神山入りし、1週間の教育者を育てるマスタークラスを行いました。
オリジナルからくりを作るという課題を3チームに分けて行い、機構からからくりのコンセプトをそれぞれ練り上げ、日々の仕事との並行で寝ずの作業です。しかし、ここで得た知識や経験はこれからのKMSの大きな財産になっています。
マスタークラスへ参加した10名が今のKMSコアメンバーです。十人十色と、ことわざの通り、3Dデザイナー、エンジニア、ウェブデザイナーから木工デザイナーや村上隆のアシスタント、パイ屋さん旅館の女将などなどと本当様々な顔ぶれです。私はメンバーの技術もKMSの財産だと思っています。コアメンバーの役割はKMSの設備の管理、それからワークショップや商品開発、教育関係の技術提供です。
Fablab・メイカースペース等、日本にもたくさん増えてきましたが、形態は本当に様々です。大学やホームセンターの一部であったり、独自の運営であったり。さっきも書かせてもらったように、そのスペースの中身や人が大事なのです。
KMS=神山メイカースペース
2月から色々と悩みました。1つはKMSをどのような形態へ進めていけば良いのか。4月からKMSが一般の方へもオープンし、まずは多くの地元の方へメイカースペースでできることを紹介していこうと思いました。教育機関でも利用してくださって、コンプレックスへ足を運んでくださる方の年齢層に幅ができました。今までコンプレックスを疎遠に感じられていた方も興味を持ってくださって、覗いてくれる。私の日々の仕事の一つは、今までものを作ってこられてきた方にとって、ハイテク機器と言っても、そんなに遠い話ではなく、いかに面白いか、新しい道具の1つとして捉えてください、そしてものづくりの幅が広がりますよ!とお伝えすることです。
もう1つの日々の考えことはKMSの運営です。ここは運営メンバーとみなさんから集める会費と、利用者全員の日々のケアによって、場所と設備を維持していきます。KMS独自の運営でどこからかメンバーへ給料が支払われているわけではありません。「作りたいものを作る」オープンな場所を目指しているので、トップダウンでない運営です。しかし機械の管理費も安いわけではないので、どう維持して行くかは本当悩みどころです。これから少しづつものづくり土台を固めていければと思いますので、皆さんのご理解とご協力と面白いアイディアをよろしくお願いします!